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京都地方裁判所 昭和62年(行ウ)10号 判決 1987年5月25日

京都府亀岡市大井町小金岐二-二九-一

原告

河原林武弘

右訴訟代理人弁護士

岩佐英夫

吉田眞佐子

京都府宇治市大久保町井の尻六〇番地の三

被告

宇治税務署長

尾松末三

右指定代理人

岡本誠二

足立孝和

三好正幸

西田饒

中西俊章

滝川通

主文

一  本件訴えをいずれも却下する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一申立

一  原告

1  被告が原告に対し昭和六一年五月九日付でした原告の昭和五七年分ないし昭和五九年分の総所得金額をいずれも零とする所得税の更正処分を取消す。

2  被告は原告に対し、原告の昭和五七年分の総所得金額が五六万五〇〇〇円、昭和五八年分の総所得金額が一二一万四三〇〇円、昭和五九年分の総所得金額が一三二万円であることを確認する。

3  訴訟費用は被告の負担とする。

二  被告

主文と同旨。

第二主張

一  原告

1  原告は、被告に対し本件係争年分の確定申告をした。

被告は、昭和六一年五月九日付で本件更正処分をした。

原告は、本件更正処分に対し異議申立及び審査請求をした。

以上の経過と内容は、別表記載のとおりである。

2  本件更正処分は、原告の所得を過少に認定した点で違法であり、原告の総所得金額は昭和五七年分が五六万五〇〇〇円、昭和五八年分が一二一万四三〇〇円、昭和五九年分が一三二万円である。

よつて、本件更正処分の取消し並びに右総所得金額の確認を求める。

3  なお、原告は、宇治市大久保町旦椋五〇-二大久保ショッピングセンター内にて書籍、文具の販売店を営んでいた者である。しかるに、被告は、原告が訴外出野武と同じ「文星堂」との名称を用いていることから、原告を出野の従業員であつて、独立の事業者ではないと考え、事業所得金額を零とする本件更正処分をした。原告は、本件更正処分により、継続して営業していること及び所得があることについての証明が得られなくなつて、融資を受けるのに困難を来すなど信用上多大の不利益を受けているから、本訴請求につき訴えの利益がある。

二  被告

1  原告主張1の事実は認める。

2  本件更正処分は、いずれも減額更正処分であり、原告の権利利益を侵害するものではない。従つて、原告の請求のうち本件更正処分の取消を求める部分は、訴えの利益を欠く。

3  原告の請求のうち所得金額の確認を求める部分は、単なる事実の確認を求めるものであつて、確認の利益を欠く。

理由

一  本件更正処分に至る経過と内容が別表記載の通りであることは当事者間に争いがない。

二  本件更正処分は、原告の申告した納税義務を消滅させたものであつて、原告の権利ないし法律上の利益を侵害するものではないから、原告にはその取消を求める訴えの利益がない。原告の主張するような信用上の不利益があるとしても、これは、本件更正処分の直接の効果ではなく、法律上の不利益とも言えず、訴えの利益を基礎づけるものではない。

三  一般的に確認の訴えは原告の権利ないし法律的地位の確認を求める場合に限り許されるところ、本件所得金額確認の訴えは、所得金額と言う単なる事実の確認を求めるものに過ぎないから、確認の利益を認めることができない。

四  よつて、本件訴えはいずれも不適法なものであるから却下することとし、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 井関正裕 裁判官 田中恭介 裁判官 榎戸道也)

別表

課税の経緯

<省略>

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